最高人民法院知的財産権法廷は、2020年に結審した2787件の技術類知的財産権に関わる案件から55件の典型的判例を選出し、46条の裁判規則をまとめ、「最高人民法院知的財産権法廷裁判要旨(2020)」を編纂した。この「要旨(2020)」は、最高人民法院知的財産権法廷が技術類知的財産権審判で複雑で新しい類型の案件を処理する司法理念、審理方針及び裁判方法を反映している。

一、特許民事案件の裁判

1.「禁訴令」に関わる行為保全の考慮要素

国外法院による裁決を申請することを禁止する行為保全請求について、人民法院は次の要素を考慮して判断しなければならない。被請求者が国外法院による判決を申請することは中国訴訟の審理と執行に実質的な影響があるか;行為保全は必ず必要か;行為保全を行わない場合の請求者の損失は、行為保全を行う場合の被請求者の損失より大きいか;行為保全を行うことは公共利益に損失をもたらすか;行為保全を行うことは国際礼譲原則に合致するか;その他考慮すべき要素。被請求者が国外法院による判決を申請することは中国訴訟の審理と執行に実質的な影響があるか否かを判断する際に、国内外の訴訟当事者が基本的に同じであるか、審理対象が重複しているか、被請求者の国外における訴訟行為の効果が中国における訴訟に対して妨害を起こすかなどを考慮することができる。行為保全は必ず必要かを判断する際に、行為保全を行わない場合に請求者の合法的権益に取り返しのつかない損害をもたらすか、または案件裁決の執行ができないなどの結果になるかを重点的に考慮すべきである。なお、上記損害には、物質に関わる有形的損失も含まれ、商業チャンスや、市場利益などの無形的損害も含まれる。国際礼譲原則に合致するかを判断する際に、案件受理の日付、案件の管轄が適当か否か、国外法院による審理及び裁判への影響が適度か否かなどの要素を考慮することができる。

2.「禁訴令」に関わる行為保全における「日数により懲罰を計算」措置の適用

被請求者が一定の行為を行うことを禁止する行為保全措置は特殊性がある。被請求者は行為保全裁定で確定された不作為義務に履行しなく、元の状態を変更した行為を実施した場合、その故意的な違法行為が行為保全裁定に対する継続的違反、及び元の状態に対する継続的変更と看做され、毎日も違法行為を実施したと看做されるべきである。この場合、情状により、日数により罰金を計算することができる。

3.職務発明を認定する前提条件

発明者が所属会社又は特許法実施細則第12条第2項に記載の臨時所属会社との間に労働関係が存在することは、職務発明を認定する前提である。この前提を満たす基準は、所属会社が発明者の関連発明創造を完成するための創造性労働を含む労働に対する支配権を有することである。所属会社は発明者との間に一般的な協力関係だけがあり、発明者の労働に対する支配権を有しない場合、当該発明者の発明創造は職務発明創造に該当しない。

4.元の所属会社から辞職してから一年間以内に作った発明創造の権利帰属

社員が元の所属会社から辞職してから一年間以内に作った元の所属会社で担当した仕事内容に関わる発明創造は元の所属会社の職務発明創造であり、その特許出願権及び特許権は元の所属会社に帰属する。また、当該発明創造は当該発明者の新しい所属会社で担当している仕事内容にも関係があるとしても、新しい所属会社は当然に当該発明創造に対して関連権利を享有するものではない。

5.許可を得ずに他人の技術秘密を無断で使用し、特許を出願する際の権利帰属

技術秘密の保有者は技術秘密侵害を理由として、関連する特許出願権又は特許権に対する所有権を主張する場合、人民法院はその特許文献に当該技術秘密が開示されているか否か、又は特許技術案で当該技術秘密が使用されているか否か、及び当該技術秘密が特許技術案の実質的内容になっているか否かを確認すべきである。当該技術秘密が特許文献に開示されている又は特許技術案で使用されている、しかも特許技術案の実質的内容になっていることを確認できた場合、その特許出願又は特許に関わる権利は当該技術秘密の保有者に帰属する。

6.特許権の帰属に係る係争期間に善良管理義務を履行しない場合の損害賠償責任

特許出願権又は特許権の帰属に係る係争期間に、特許出願人又は登録された特許権者は信義誠実の原則により、特許権を取得できるために積極的に努力する、又は既に登録された特許の有効性を積極的に維持すると言う善良管理義務を履行すべきである。特許出願人又は登録された特許権者は正当な理由がなく善良管理義務を履行しなく、特許権が終止又は喪失され、本当の特許権者の合法的権益を損害した場合、特許権者にもたらした財産上の損失に対して、賠償を支払わなければならない。

7.クレームにおける「一」の解釈

クレームにおける「一」について、数量に対する限定だけであると簡単に認定するものではなく、当業者が特許請求の範囲及び明細書を読み込んだ上での理解により、その具体的な意味を認定すべきである。

8.特許権侵害判定における「生産経営のため」の認定

特許法第11条第1項に規定の「生産経営のため」について、それが営利活動を行うことであると簡単に認定するものではなく、特許実施者の性質だけにより認定するものもない。特許実施行為自体を分析し、その行為が市場活動に該当するか否か、特許権者の市場における利益を損害するか否かなどの要素を考慮した上で、総合的に判断すべきである。政府機関、公益団体などの公共管理、社会サービス、公益事業を行う主体であるとしても、特許を実施し、市場活動に参与することにより特許権者の市場における利益を損害する可能性がある場合、その行為が「生産経営のため」に該当すると認定されることもできる。

9.特許の共同実施者の認定

競争入札において、技術案を指定する入札者、及び加工契約における技術案を提供する発注者は、実質的に特許技術案の実施を決定したので、落札者、受注者などの直接に特許を実施した主体一緒に、特許の共同実施者になっている。

10.「意図的に排除する」規則が均等論の適用に対する制限

当業者は特許請求の範囲、明細書を読み込んだ後、特許出願人又は特許権者がクレームにおいてある特徴の用語の意味を特別に強調することで特定な技術案を意図的に排除していることを判断した場合、均等論を適用することにより、その排除している技術案を改めて当該特許の保護範囲に入れることはできない。

11.先行技術抗弁における「実質的な相違点がない」に対する判断

先行技術抗弁の認定において、被疑侵害技術案のある技術的特徴と先行技術案における技術的特徴とは、当業界で直接に置換できる通常手段に該当する場合、この二つの技術的特徴に実質的な相違点がないと認定することができる。

12.侵害による利益により損害賠償額を確定する際の証明責任

特許権侵害紛争案件において、特許権者が損害賠償金額について既に力を尽くして挙証し、しかもその提出した証拠に基づいて被疑侵害者が侵害により取得した利益を合理的に算出できる場合、人民法院は支持すべきである。被告は原告が主張した賠償額に反対する場合、上記侵害による利益を証明する証拠を十分に覆すことができる反証を提出し、また実際に取得した利益を証明しなければならない。

13.法定賠償額を適用する際、又は損害賠償金額を適切に確定する際に考慮すべき要素

特許権侵害紛争案件において、侵害による損失、侵害による利益、又は参考できる特許ライセンス料に関わる証拠を欠如するため、法定賠償額を適用する必要がある場合、又は、上記証拠があるが損失の具体的な金額を確定できないため、損害賠償額を適切に確定する必要がある場合、被疑侵害行為の性質、被疑侵害製品の価値と利潤率、被疑侵害者の経営状況、被疑侵害者の主観的な悪意、特許権者が関連訴訟で取得した賠償金などの要素を総合的に考慮することができる。

なお、特許権者が直接に被疑侵害製品の製造者に対して権利行使することを激励するために、侵害の源とする製造者に対して賠償額を引き上げるべきである。被疑侵害者の販売者と使用者について、事実及び法によりそれらの法的責任を確定すべきである。また、特許権者の侵害による損失が法定賠償額の上限よりも高い、又は下限よりも低いことを証明できる証拠がある場合、上限以上又は下限以下の賠償額を確定することができる。

14.営業利益により侵害による利益を計算する方法

営業利益により、侵害による利益を計算する際に、売上収益から売上原価と増値税税金を差し引いてから、更に販売費、管理費及び財務費用を差し引くことにより計算することができる。また、売上収益に営業利益率を掛けることで簡単に計算することもできる。

15.一部の共同侵害者が特許権者と和解して実際に賠償金を支払った後のその他の共同侵害者の責任

特許権侵害紛争案件において、一部の共同侵害者は特許権者と和解して、実際に権利者に一部の賠償金を支払った場合、権利者が重複に賠償金を受け取ることを避けるために、その他の共同侵害者は上記一部の賠償金を差し引いた損害賠償金だけに対して、権利者に連帯賠償責任を負う必要がある。

16.特許権者は独自に特許を実施したことにより取得した利益の分配

特許出願権又は特許権の共有者の間に権利行使に関わる約定がなく、共有者の1人が独自に特許を実施した場合、その他の共有者は特許権を共同で保有する理由で上記独自に実施したことにより取得した利益を配ることを主張しても、人民法院はその主張を支持しない。

17.特許権無効審判の審決が発効する前の非侵害確認訴訟の受理

特許権無効審判請求の審決は、下れた時点で即座に発効するものではないため、その審決が確実な法律効力が発生するまで特許権が依然として有効であり、侵害警告が依然として権利基礎がある。被警告人が侵害警告に対して非侵害確認訴訟を提起した場合、法定の起訴条件を満たせば、人民法院は受理すべきである。

18.発明特許出願が拒絶された後、同一の技術案で同日に出願した実用新案権に関わる権利侵害救済

当事者は同一の技術案で同日に発明特許と実用新案を出願したが、発明特許出願が新規性を有していない理由、又は同分野の引用文献により進歩性を有していない理由で授権されなかった、且つ、法律状態が既に確定された場合、当事者が別途で授権された実用新案権に基づいて侵害救済を請求すると、人民法院は支持しない。

二、特許行政案件の裁判

19.二つ以上の異なる数値範囲の技術的特徴により保護範囲を限定するクレームは明細書にサポートされることができるか否かの判断

二つ以上の異なる数値範囲の技術的特徴により保護範囲を限定するクレームについて、当業者は明細書を読み込むことにより、各数値範囲の技術的特徴の間に互いに対応している関係が存在することを確定することができ、また回数が限れた実験で発明の目的を満たす具体的な実施方法を得られ、更にに過度の労働をせずに発明の目的を実現できない技術案を排除することができる場合、当該クレームが明細書にサポートされることができると認定すべきである。

20、公知常識証拠の認定

公知常識証拠は、通常、技術辞典、技術マニュアル、教科書などの当業界の基本技術知識が記載されている文献を指す。技術辞典、技術マニュアル、教科書以外の文献は公知常識証拠になれるか否かについて、当該文献の運び手、内容及び特徴、対象ユーザー、伝播範囲などの要素を総合的に考慮して判断する必要がある。

21. アクセスを許可する必要があるサイバースペース情報は先行設定又は先行技術に該当するか否かの認定

QQスペース、WeChatモーメンツなどのアクセスを許可する必要があるサイバースペース情報は先行設定又は先行技術に該当するか否かについて、当該サイバースペースの主な用途、当該情報のアップロード日付及び公開状況などの要素を総合的に考慮し、特許出願日前に当該情報が既存に公衆に自由に閲覧されることができる状態にあったか否かを判断基準とすべきである。アクセスを許可する必要があるサイバースペースは、主にビジネスに使用されている場合、全ての公衆に向けて公開していることを認定できる。なお、当該サイバースペースが公開されていない又は特定の対象のみに向けて公開されていることを証明できる反証がある場合は除く。

22、区別的技術的特徴を確定する際に発明思想に対する考慮

発明思想が各技術要素を組合わせることだけにあり、また先行技術には当該組み合わせに関わる示唆も開示されていなく、当該組み合わせの技術的効果も開示されていない場合、当該特許と最も近い先行技術との区別的技術的特徴を確定する際に、互いに組合わせられている複数の技術要素を一つの区別的特徴として認定することができる。

23、「課題の提出」は進歩性判断における考え方

特許技術案の進歩性は「課題の解決」から由来することもあるし、「課題の提出」から由来することもある。先行技術を進歩させる難点は課題の発見にある場合、「課題の提出」が当業者にとって自明的であるか否かを考慮しないと、後知恵の過ちを犯し、技術案の進歩性を過小評価する可能性がある。

24.先行技術を改善する動機の源

先行技術を改善する動機は必ず最も近い先行技術の欠陥を克服することから由来ものではない。最も近い先行技術に明らかな欠陥が存在しないとしても、解決する必要がある技術課題が存在する可能性もあるので、当該解決する必要がある技術課題から先行技術を改善する動機が生じる可能性がある。

25.最も近い先行技術が区別的技術的特徴の応用を明確に排除している場合の改善動機の判断

発明創造の技術案と最も近い先行技術との間に区別的技術的特徴があり、また当該先行技術が当該区別的技術的特徴を応用することを明確に排除している場合、当業者が区別的技術的特徴が解決しようとする技術課題に対して、保護を求めようとする技術案を取得するために先行技術を改善する動機を欠如すると認定することができる。

26.同一の特許について複数の無効審判が提起された場合のクレームを修正することによる影響

同一の特許権に対する複数の無効審判について、特許権者がその中の一つの無効審判においてクレームを修正した、しかも当該修正が国家知識産権局に認められた場合、修正前のクレームに基づいた後行の審査決定により起こされた特許権確定行政案件について、審査基礎がなくなったため、引き続き審理する必要がない。この場合、人民法院は上記後行の決定を取り消すべきであるが、国家知識産局が改めて審査決定を下すと命じる必要がない。

27.化合物が新規性を有していない推定を覆すための挙証責任

先行技術文献に特許出願又は特許における保護を求めようとする化合物が既に開示された場合、当該特許出願又は特許が新規性を有していないと推定することができる。但し、特許出願人又は特許権者が出願日前に当該化合物を製造できないことを証明できる証拠がある場合は除く。この場合、特許出願人又は特許権者は、当該先行技術文献に開示されている実験方法で当該化合物を製造できないことを証明する必要があるし、当業界の通常の実験方法を利用して、また当業者の通常のスキルを十分に発揮しても当該化合物を製造できないことも証明する必要がある。

28.国家知識産権局は海外の文献を引用文献として引用する場合、その中国語翻訳を提出する必要があるか

国家知識産権局は海外の文献を引用文献として引用する場合、資格のある翻訳会社による中国語翻訳を提出する法定義務はない。

三、植物新品種に関わる案件の裁判

29.契約書に約定されている生産規模を超えた種を販売する行為に対する権利侵害確認

植物新品種権利者は他人に当該品種の種の生産を委託した際にその生産規模を約定した場合、受任者は許可を得ずに契約書に約定されている生産規模を超えた種を販売する行為は、当該植物新品種権を侵害する行為に該当する。

30.「農民が個人で繁殖し個人で使用する場合」が例外に該当するか否かの認定

種法の第29条第2項に規定されている例外の「農民が個人で繁殖し個人で使用する場合」を適用使用とする場合、少なくとも下記二つの条件を満たさなければならない。①適用主体は農村請負経営者である。即ち、農村集団経済組織と農村土地請負経営契約を締結し、土地の請負経営権を取得した農村集団経済組織の成員である。②適用範囲は当該農村請負経営者が請負した土地を超えてはならない。

四、技術秘密に関わる案件の裁判

31.技術秘密保持措置の認定

技術秘密は市場で流通する製品を媒体とする場合、権利者は製品にラベルを貼り付けて技術秘密に対する所有権を一方的に宣言し、また約定の守秘義務を負わない第三者が製品を分解することを禁止する行為は、不正競争禁止法に規定の秘密保持措置に該当しない。

32.権利侵害を業とすることの認定

行為を行った者がその行為が権利侵害になることを知っており、また実際に侵害行為を実施した、しかも当該侵害行為がその主な取扱業務である場合、「権利侵害を業とする」と認定することができる。

33.懲罰的賠償を適用する場合、「情状が深刻」を判断する際の考慮要素

技術秘密を侵害する行為が「侵害情状が深刻」か否か、且つ懲罰的賠償を適用すべきか否かと判断する際に、被疑侵害者が権利侵害を業とするか否か、侵害行為が刑事犯罪になるか否か、訴訟中に挙証を妨害する行為が存在するか否か、侵害による損失又は侵害による利益の金額、侵害の規模、侵害行為の継続期間などは要素として考慮することができる。

五、コンピュータソフトウェアに関わる案件の裁判

34.コンピュータソフトウェア著作権侵害の判断

コンピュータソフトウェア著作権侵害の判断は、「接触と実質的に類似」の基準に従うべきである。ソースコードを比較することはコンピュータソフトウェア著作権侵害判断に必須な条件と作業ではない。

35.技術措置の有効性の認定

著作権法に規定されている著作権を保護する技術措置とは、正常の使用環境で権利侵害行為を有効的に防止する技術措置であるが、当該技術措置が全く回避されることができない又は破られることができないことを要求するものではない。

36.コンピュータソフトウェア開発契約における段階分け支払に対する理解

コンピュータソフトウェア開発契約は履行期間が長い、ソフトウェア機能に対する需要が開発の進展により変化するなどの特徴がある。これに対応して、コンピュータソフトウェア開発分野では、段階を分けて、割合によって支払う商習慣がる。各開発段階が互いに依存し合い、緊密に接続し合っていることを考慮し、依頼者が段階ごとに支払う料金がその対応する開発段階の成果の対価であると理解すべきか否かについて、契約書の約定と履行の状況により具体的に確定すべきである。

六、集積回路設計に関わる案件の裁判

37.集積回路設計専有権の保護範囲の確定

集積回路設計登録の趣旨は設計の内容を公開することではなく、その設計の保護対象を確定することである。したがって、集積回路設計の内容を公開することは集積回路設計専有権を取得する条件ではない。

38.集積回路設計の独創性の認定

集積回路設計の保護対象は、ある電子機能を執行するために部品、線路に対する独創的な立体的配置である。権利者はその設計の立体的配置全体又は一部が独創性があることを主張する場合、その独創性を合理的に解釈又は説明する必要がある。なお、被疑侵害者が権利者の解釈又は説明を覆すことができない場合、当該集積回路設計が独創性があると認定すべきである。

七、独占に関わる案件の裁判

39.水平的独占協定の実施者はその他の実施者に経済損失を賠償することを求める場合の処理方

水平的独占協定の実施者は、その他の実施者に水平的協定の実施による経済損失を賠償することを求める権利がない。

40.行政権力の濫用により起こされた独占民事紛争案件の受理条件

独占民事紛争案件において、被告の実施した被疑独占行為が、行政機関又は法律、法規に授権された公共事務を管理する職能を有する組織が行政権力で取引を制限したこと、又は強制的に要求したことにより発生した場合、原告が提訴する前に当該行政行為が行政権力を濫用して競争を排除、制限することに該当すると認定されなかったとすれば、人民法院はその提訴を受理しない又は却下することができる。

八、管轄などの手続き上の案件の裁判

41.管轄権異議訴訟の審理範囲と移行を受理する法院の範囲

人民法院は管轄権異議訴訟における審理範囲は当事者の管轄権異議理由に限定する。元の法院が管轄権を有しない場合、案件の移行先法院も当事者の管轄権異議で請求する移行先法院に限らない。

42.訴訟段階において新しい事実を発見した場合の管轄権恒定原則の適用

元の審理法院が本院が当該案件に対する管轄権を有しないと認定した場合、管轄権恒定原則を適用する前提を欠如する。その後、元の法院は管轄権を有する新たな事実を発見した場合、当該新たな事実により管轄を確定すべきである。

43.渉外民事紛争案件の管轄を判断する際の適当関連原則

中国国内に住所とオフィスがない原告が提起した渉外民事紛争案件について、中国法院が管轄権があるか否かを判断する際に、当該紛争が中国と適当な関連性があるか否かを審理すべきである。被告の中国で住所とオフィスがない標準必須特許のライセンスに関わる紛争案件が中国と適当な連絡性があるか否かを判断する際に、ライセンスする対象の所在地、特許実施地、契約の締結地、契約の履行地などが中国国内にあるか否かを考慮することができる。なお、上記の何れか一つが中国国内にある場合、当該案件が中国と適当な関連性があり、中国法院が当該案件に対する管轄権を有すると認定すべきである。

44.国外独占行為に関わる独占民事紛争案件の管轄

当事者は国外の独占行為により中国国内で損失を受けた理由で訴訟を提起する場合、当該国外の独占行為が中国国内の市場競争に排除、制限の影響をもたらしたという結果の発生地を案件管轄の連結点とすることができる。

45.証拠保全請求を審理する際に考慮すべき要素

証拠保全請求について、人民法院は証拠保全を請求した際に、依拠とされた証拠と証明しようとする事実との間の関連性、証拠保全の必要性、及び実行可能性などの要素を総合的に考慮すべきである。なお、証拠保全の必要性を判断する際に、保全を求めようとする証拠が案件事実と関連性があるか否か、その証拠が喪失のリスクがある否か又はその後改めて取得できないか否か、及び出願人が証拠収集のために最善を尽くしたか否かなどの要素を考慮することができる。

46.ECサイトに係る特許権侵害紛争における逆行行為保全の適用

ECサイトに係る特許権侵害紛争において、被告が行為保全請求を提出し、ECサイトの運営者が被疑侵害リンクの削除、切断、ブロックし、取引とサービスを停止することを求める場合、人民法院は審査すべきである。「取り返しのつかない損害」を判断する際に、行為保全を行わない場合に請求者の名誉などの権利をひどく損害されるか否か、請求者の市場における競争優位性がひどく損害されるか否か、又はビジネス機会が失われるか否か菜度の要素を考慮することができる。また、関連損失について賠償金を求めることができるが、損失が莫大で計算ができない場合、「取り返しのつかない損害」であると認定することができる。行為保全の担保は固定担保金と動態担保金とを合わせる方式を使用することができる。なお、動態担保金は上記措置を取り消した後の取得可能な利益により確定することができる。

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