1 はじめに

 昨今、生成AIやメタバースなどのデジタル技術の進展が急速に進んでいるが、それに伴い、それらの技術の利用に内在する様々なリスクが顕在化してきている。直近でも、日本において、首相の映像を用いたフェイク動画や、実在のアナウンサーの映像を用いたニュース番組風のフェイク動画が生成AIを利用して作成され、インターネット上で拡散されたことが話題となったが、より精度の高いフェイク動画等の偽情報が現れるのも時間の問題であるように思われる。

 このような状況の中で、総務省は新たに、「デジタル空間における情報流通の健全性確保の在り方に関する検討会」(以下「本検討会」という。)を立ち上げ、その第1回会合が2023年11月7日に開催された。本検討会の目的は、デジタル空間が拡大・深化し、ステークホルダーが多様化していく中において、「実空間に影響を及ぼす新たな課題およびそれらに対するステークホルダーの対応等の現状を分析」するとともに、「デジタル空間における情報流通の健全性確保に向けた今後の対応方針と具体的な方策について検討すること」とされている。

 本検討会の議事概要は本稿執筆時点で公開されていないため、本稿では、第1回会合の配布資料について、その概要を紹介する。

2 本検討会の主な検討事項

 まず、本検討会の主な検討事項としては、下記表の4点が挙げられている。

検討事項
デジタル空間を活用したサービスの普及・情報通信技術の進展等の状況
  • 生成AI
  • メタバース
デジタル空間における情報流通を巡る新たな課題と各ステークホルダーによる対応状況
  • 生成AI等による巧妙な偽・誤情報の生成や拡散に伴う社会的な影響の深刻化
  • メタバースにおけるデータの取得・利用にかかる対応の重要性
  • 国境を越えた情報・データ流通の広域化や迅速化に伴う国際的な協調の必要性
今後の対応に当たっての基本的な考え方

基本理念:

  • 信頼性のある自由な情報流通、表現の自由、知る権利、青少年を含む利用者保護
  • デジタルシティズンシップ

各ステークホルダーの役割:

  • デジタルプラットフォーム事業者、生成AI事業者、仮想空間関係事業者
  • 通信・放送事業者、利用者
デジタル空間における情報流通の健全性確保に向けた具体的な方策
  • 多様なステークホルダーによる協力関係の構築
  • ファクトチェックの推進
  • 幅広い世代に対するリテラシーの向上
  • 情報発信者側を含む自主的取組の推進
  • 研究開発の推進
  • 国際的な対話の深化
  • 生成AI・メタバース関連事項


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Originally published by Shojihomu Portal.

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