東京オリンピックが2021年7月23日に開幕した当時、同年5月中旬から深刻となった台湾の新型コロナウイルスの感染状況段々落ち着いてきたため、台湾国民もオリンピックの試合を観戦するムードがより高まった。特に、今回の東京オリンピックで台湾代表が獲得したメダル数は台湾史上最多であり、台湾代表が出場した、卓球、バドミントン、重量挙げ等の種目に国民の関心が寄せられ、FACEBOOK、INSTAGRAM等のソーシャルメディアで観戦の感想を綴る者も多かった。

このような雰囲気の中で、台湾においてはいくつかのオリンピックと知的財産権に係る事態も発生した。とりわけ、(有名人を含む)少数の視聴者が、台湾当局に販売禁止されたセットトップボックスで東京オリンピックの試合を観戦したことが焦点となった。台湾の知的財産局の現在の公式見解によると、このような販売禁止されたセットトップボックスを使用する視聴者は、著作権侵害とならない。そして、セットトップボックスを使用する視聴者が自宅で視聴する一般人であり、有名人でない場合、第三者に知られることがなく、批判の対象にもならない。一方、法的に問題がないといえども、プライベートで違法なセットトップボックスを利用して視聴するのは有名人(例えば芸能人)である場合、容易く看過されない。自撮り写真や自身の生活ぶりを頻繁にソーシャルメディアに投稿する有名人がいるが、自分の一挙一動が常に他人に注意深く見られていることを忘れれば、不都合なことがあらわになる可能性が高い。例えば、最近、自撮り写真に写ったテレビの画面に、合法的な放送の画面にあるべきでないニュース・ティッカーが出ていたり、自撮り写真に写ったテレビの側に違法なセットトップボックスがあったりする出来事が起きた。

報道によると、この類のセットトップボックスは、違法なソフトウェアが搭載されるものであり(若しくは、違法にならないために、業者はセットトップボックスに違法なソフトウェアを搭載しないものの、目立たない方法で視聴者がソフトウェアをインストールできるように指南する)、視聴者が自宅で設置すれば、そのソフトウェアを通して著作権者の許諾を受けていない動画を提供するウェブサイトにアクセスすることができるようになる。特に取り立てて言う必要がないが、これらのウェブサイトは通常台湾国外に設置されているため、取り締まりが困難となる。

台湾の政府機関(例えば知的財産局、セットトップボックスの管理を職掌とする国家通訊伝播委員会)も、このような事態の発生を機に、セットトップボックスを購入する際に許可取得済みのものであるかどうかに留意しなければならないことを消費者に、及び違法なセットトップボックスを販売すれば台湾の著作権法第87条第1項第8号の違反で民事・刑事責任が生じることを業者に注意喚起した。

台湾の著作権法87条第1項第8号によると、他人が公開放送又は公開伝送した著作物が著作財産権を侵害したことを知りながら、インターネットを通して公衆にその著作物にアクセスさせることを意図し、次に掲げるいずれかの事情により、利益を受ける場合、著作権侵害となる。

(一) その著作物のネットワークアドレスをまとめるコンピュータプログラムを公衆の利用に供する

(二) 公衆が上記の(一)のコンピュータプログラムを利用するよう指導、協力、又は予めパスを指定する

(三) 上記の(一)のコンピュータプログラムを搭載する設備又は器材を製造、輸入又は販売する

この規定の詳細について、弊所の 記事をご参照ください。

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