最近(2021年2月)、台湾の知的財産裁判所は、ある商標権侵害事件の中間判決(109年度民商訴字第27号)を下した。この事件で侵害された商標は世界的に有名なものであり、商標のフェアユース(公正利用)と商標権の消尽に係るので、その内容を通して商標権侵害訴訟でよく見られる抗弁に対する知的財産裁判所の見解と態度が伺えるかと思われる。

この事件の被告はおもちゃ(ブロック)の販売業者であり、被告が販売したものには、有名なレゴブロック及び他のブランド(例えばハローキティ)のおもちゃが含まれていた。そして、裁判所が確定した事実によると、被告はブロックを販売した売り場の正門に「LEGO」(レゴ)商標を記載した貼紙を張ったほか、「LEGO」商標が掲載された旗を売り場に配置した。しかも、被告は自分のトラックをレゴ社が出品したおもちゃのトラックの外見に一致するように改装し、そのトラックに「LEGO」商標が掲載された貼紙を張り、売り場の外に駐車した。しかし、被告は商標権者のレゴ社の代理店でなく、商標権者から許諾を受けたこともなかった。

そこで、レゴ社は、被告がその商標権を侵害したとして、商標権侵害訴訟を提起し、侵害差止めや損害賠償などを請求した。

上記の判決において、裁判所は先ず被告の行為がフェアユースに該当するかを検討した。裁判所が写真などの証拠を確認したところ、被告が売り場に配置した旗に被告の商号が掲載されていたが、その面積は極めて小さく、消費者がそれに気付くことが困難であることが分かった。それと反対に、被告が売り場の正門とトラックに張った貼紙の視覚的な効果はとても目立っていたため、裁判所は、被告が「LEGO」を商標として利用しており、製品又は役務に対する説明のみに用いるフェアユースに該当しないと判断した。

そして、被告は、自分のトラックをレゴ社が出品したおもちゃのトラックの外見に一致するように改装し、そのトラックに「LEGO」商標が掲載された貼紙を張ったことを、「LEGO」に対する商標パロディ(parody)であると、商標権侵害を否認してみたが、裁判所は、その弁解に全く理由がないと判断したのか、それほど論じずに被告の弁解を否定した。

ここで、筆者は、裁判所がこの弁解に全く理由がないと判断した原因の説明を試みる。知的財産裁判所は、既に以前の判決でパロディがフェアユースに該当する場合の条件を論じていた。例えば、108年度民商上字第5号の判決において、米国の判決を引用した上、パロディがフェアユースに該当する場合の二つの条件を提示した。

「原作(模倣された商標)と全く関係ない」というメッセージを明らかに伝え、消費者に混同させ、又は商標権者の名声に便乗する意図がない。
使用行為が、原作とそれを模倣した作品に面白さを感じさせる対比・相違点を生じさせ、戯れ又はユーモアの含蓄・論点を表現する上、直ちに消費者にそれがパロディであると気付かせる。


一方、この事件では、被告は、「LEGO」商標が表示する商品の出所と全く関係ないことを明らかに伝えていない上、被告のトラックとそのトラックに張った貼紙を通して伝えたものは、対比・相違点で生じたユーモアでもない(むしろ、両者の類似性を通して、このトラックがレゴ社と何らかの関係があるかと消費者に思わせることこそ、被告が伝えようとしたポイントである)。よって、被告の商標パロディに関する主張に全く正当な理由がないと判断したのは妥当であろう。

また、被告は、自分が販売したレゴブロックが真正品であり、売り場の正門とトラックに張った貼紙も真正品であるため、商標権が既に消尽したと弁解を試みたが、これも裁判所に否定された。裁判所の見解では、並行輸入品(真正品)を輸入した場合、商標権消尽の原則によれば、商標権者がその商標が付いた並行輸入品に対し商標権を主張することができないが、商標権消尽の効力は並行輸入品の本体の正常な使用のみに及ぶ。すなわち、もし並行輸入品の更なる利用をし、例えば他人の商標の指定商品と同一の、又は類似する自分の商品を販促するために、その商品の出所を表示する広告に転用すれば、商標権消尽を主張することはできない。それで、たとえ被告が販売したレゴブロックが真正品であり、売り場の正門とトラックに張った貼紙も真正品であるとしても、被告が商標権者の同意なしにその貼紙を転売することができるが、それを商標として目立った場所に張って商品を販促することを認めるべきではない。

最後に、裁判所は被告が確かに「LEGO」商標の商標権を侵害したと判断した。現在、この事件には中間判決のみがあり、裁判所が終局判決を下す前に、どれほどの損害賠償金を命じるかは不明である。

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