1 はじめに

 金融庁は、2023年11月27日付で、「中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針」「主要行等向けの総合的な監督指針」、「系統金融機関向けの総合的な監督指針」および「漁協系統信用事業における総合的な監督指針」の一部改正案(以下あわせて「監督指針改正案」という。)を公表した 1

 金融機関に対し、融資先への支援の軸足をコロナ禍の資金繰り支援から事業者の実情に応じた経営改善や事業再生支援に転換することを求めるため、所要の改正を行うものである。意見募集期間は2024年1月5日までとされており、2024年春に適用されることが見込まれている。

2 改正の背景

 2023年5月、新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけが5類感染症に移行したことを受け、社会経済活動の正常化が進んでいる。一方で、原材料・エネルギー価格等の高騰や円安、人手不足の影響等により、厳しい環境に置かれた事業者が数多く存在している中で、2023年7月以降、新型コロナ対策として官民の金融機関において実施した実質無利子・無担保融資の「ゼロゼロ融資」の返済が本格化しており、事業者の収益力強化や過剰債務の整理が喫緊の課題となっている。

 こうした中で、金融庁は、2023年11月27日、監督指針改正案を公表するとともに、金融機関の代表らとの意見交換会を開き、鈴木金融担当大臣は、「コロナ禍での資金繰り支援に注力した段階から、経営改善と事業再生支援に取り組む新しい段階へ移行する必要がある」と述べ、金融機関に対し、取引先への支援の軸足の移行を要請した 2

3 監督指針改正案の内容

⑴ 概要

 金融庁の説明資料 3によれば、監督指針改正案は、2つの柱から構成されている。

 第1の柱は、「一歩先を見据えた早め早めの対応の促進」であり、具体的には以下の内容が想定されている。

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