ーー外国企業に係る事件

【事件番号】(2019)最高法知民終2号

フランスヴァレオクリーニングシステム会社(VALEO SYSTEMES D'ESSUYAGE)と厦门卢卡斯自動車部品有限公司などとの「車ワイパー」に係る発明特許侵害紛争事件

基本経緯

フランスヴァレオ社は、特許番号が200610160549.2、発明の名称が「自動車のワイパーのコネクタとそれに対応する接続装置」である中国発明特許の特許権者である。厦门卢卡斯自動車部品有限公司などがワイパーの製造、販売、販売の申し出行為は本件特許権を侵害したことを主張し、厦门卢卡斯自動車部品有限公司などに対して侵害行為の停止、損害賠償及び侵害行為を阻止するための合理的な支出を含む合計600万元を人民法院に請求した。一審において、フランスヴァレオ社は訴訟中の行為保全(仮差止命令)を申請し、厦门卢卡斯自動車部品有限公司などの侵害行為を即時停止しようと法院に請求した。その後、法院が部分判決を下し、厦门卢卡斯自動車部品有限公司などが権利侵害に該当すると認定すると同時に、侵害行為の停止と命じたが、行為保全の申請に対して処理をしなかった。厦门卢卡斯自動車部品有限公司は上記判決に不服で、最高人民法院に対し上訴した。フランスヴァレオ社は上訴したなかったが、その訴訟中の行為保全申請を取り下げなかった。最高人民法院は上訴を受理してから、40日後に公開審理を行った。審理した結果、一審判決における機能的特徴の認定を訂正した上、上訴を棄却し、原審判決を維持した。また判決には、上訴により一時的に執行不能となった一審判決の法的効力のギャップを埋めるために、訴訟の状況に応じて訴訟中の行為保全申請を支持することができると指摘された。

本件の意義

この事件は、最高人民法院知的財産権法廷の設立後初の裁判であり、国家レベルの知的財産事件の上訴審理機構としての裁判所の司法機能を初めて公に示すものとなった。本件判決は、知的財産保護の強化に向けた明確な方向性を反映しており、次のような有用な検討を行った。実体の面では、機能的特徴を認定するための基準を明確にし、特許保護の範囲に対する不当な限定を回避し、特許権者が技術的貢献に見合った権利保護の範囲を確実に取得できるようにする。手続きの面では、当事者が「訴訟に勝って市場を失う」ことを防ぐために、仮判決+仮差止命令」を利用して適時かつ効率的な権利を救済することを提唱した。この訴訟は最高人民法院の指導訴訟である。

【事件番号】(2022)最高法知民終905号

中国初の医薬品のパテントリンケージに関する訴訟事件:特許の保護範囲内になるかどうかをめぐる日本中外製薬株式会社と温州海鶴薬業有限公司との間の紛争事件

基本経緯

日本中外製薬株式会社は、特許番号が200580009877.6、発明の名称が「ED-71製剤」である発明特許の特許権者である。同社は特許法第76条第1項に基づき、北京知識産権法院に医薬品のパテントリンケージ訴訟を提起し、温州海鶴薬業有限公司の後発医薬品技術案の「イデカルシドールソフトカプセル」が、本件特許の保護範囲内であると主張した。一審で、法院は上記訴訟請求を棄却した。日本中外製薬株式会社はこの判決を不服として、上訴を提起した。二審において、最高人民法院は、次の判決を下した。温州海鶴薬業有限公司は保護範囲が最大の請求項に関して声明を出さず、後発医薬品の製造販売承認取得者にその声明及びその声明の根拠を速やかに通知しなかったので、この行為は不適切であり、注意すべきである。なお、後発医薬品の技術案が特許請求の範囲内になるかどうかの判断は、原則として後発医薬品申請人の申請資料に基づいて比較・評価を行うべきである。比較した結果、後発医薬品の技術案は、本件特許請求の範囲外であると判断したため、上訴を棄却し、原判決を維持する。

本件の意義

本件は我国の初の医薬品のパテントリンケージ訴訟である。我が国の医薬品パテントリンケージ制度が初めて創設されたが、本件判決は、医薬品パテントリンケージ制度の実施の初期段階で生じた問題を立法目的に沿って探索的に法律を適用したものであり、中国国内や海外のメディア及び製薬業界から注目され、賞賛の声が上がっている。この事件は「新時代の法治進展を促進する2022年ノミネート事件トップ10」に選出された。

【事件番号】(2022)最高法知民終189号

英国のある会社と蘇州のある公司との「コードレス掃除機」に係る特許権侵害紛争事件

基本経緯

当該英国の会社と蘇州の公司は、どちらも世界の家電業界に影響力のある企業である。当該英国の会社は、蘇州の公司が製造・販売する2つのコードレス掃除機製品に使用されている技術案が、特許番号が200780027328.0、発明の名称が「手持ち式掃除機」である発明特許の保護範囲内であるとして訴訟を提起し、蘇州公司に対し、侵害を停止し、経済的損失と合理的な権利保護支出100万元を賠償することを命じるようと法院に請求した。一審法院は、英国会社の訴訟請求を棄却する判決を下したが、英国会社はこれを不服として上訴した。最高人民法院の第二審では、両当事者間に長年にわたる知的財産権紛争があることが判明し、両当事者間の一連の紛争を包括的に整理した後、両当事者間の紛争を緩和するための対話プラットフォームを設置した。複数回のコミュニケーションの後、両当事者は最終的に握手を交わし、本件を含む全世界における20余件の知的財産権紛争について一括和解に達した。これについて、双方から感謝状が贈られた。

本件の意義

この事件は、中国と外国の当事者が全世界における紛争の一括解決に到達し、「東方の経験」によって越境紛争を実質的に解決し、人民法院による「前線把握、治未の病」」「ウィンウィン」という新時代のダイナミックな司法哲学の実践を鮮明に体現したものである。市場志向で合法的かつ国際的な一流のビジネス環境の構築に貢献している。

出所:最高人民法院知的財産権法廷

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