外国公務員贈賄防止指針の改訂

平成27 年7 月30 日、経済産業省は、「外国公務員贈 賄防止指針」(以下「本指針」といいます。)を改訂し ました。本指針は、不正競争防止法の外国公務員贈賄罪 の解釈の明確化を図り、また、各企業が目指すべき外国 公務員贈賄防止体制(ベストプラクティス)を提示する ものです。

改訂版は、社交を隠れ蓑にした贈賄を防止するととも に、営業関連活動の過度の萎縮を避けるため、外国公務 員贈賄罪の構成要件(「営業上の不正の利益を得る目 的」)の解釈を明確化しました。例えば、通関時におけ る現地政府からの合理性のない差別的な取扱いを回避す るための支払であっても処罰対象になる可能性があり、 原則としてそのような支払は拒絶すべきである一方、拒 絶にかかわらず賄賂要求が継続し、自社の損害回避のた めにやむを得ず行う支払は、処罰対象にならないことが あることを明らかにしています。また、社交行為につい ても、処罰対象となる可能性の高い行為の具体例(換金 性のある商品券の贈答等)と処罰対象にならない可能性 のある行為の具体例(視察に付随する合理的かつ相当な 範囲の会食・観光の提供等)をそれぞれ提示しています。

さらに、改訂版は、国際商取引を行う企業は、内部統 制システムの一環として外国公務員贈賄防止体制の構築 及び運用が必要であることを明記し、その構築及び運用 にあたっては、進出国、事業分野及び行為類型ごとのリ スクを勘案したリスクベース・アプローチを採用するこ とを推奨し、高リスクの国、事業分野、行為類型の具体 例を挙げています。そして、海外子会社を含む子会社等 においても外国公務員贈賄防止体制の構築及び運用を推 進し、その状況を確認していくことが必要であること、 そのための親会社の支援の必要性を強調しています。 国際商取引を行う企業においては、本指針で示された 具体例を参考に、社内の外国公務員贈賄防止規程等を整 備し又は見直していくことが必要になります。

消費税法の改正:国税庁が登録国外事業者 名簿を公表

本年10 月1 日以降、電気通信利用役務の提供(イン ターネットを介して行われる電子書籍や広告等の配信、 クラウドサービスの提供、電話や電子メールによる継続 的なコンサルティング等)に関する消費税の課税ルール が変わります。従来、電気通信利用役務の提供が消費税 の課税対象である国内取引に該当するか否かは、役務提 供者の役務提供に係る事務所等の所在地を基準に判断さ れていましたが、今後は役務提供の受け手の住所・本店 等を基準に判断されることになります。したがって、電 気通信利用役務の提供者が国外事業者であっても、役務 提供の受け手の住所等が国内にあれば当該役務提供は消 費税の課税取引となります。

そして、広告の配信など、役務の性質や取引条件等か ら判断して、当該電気通信利用役務の受け手が通常事業 者に限られる場合には、原則として、国外事業者から役 務の提供を受けた課税事業者に消費税の納税義務が発生 します(リバース・チャージ)。但し、リバース・チャ ージ方式は、経過措置により当面は、当該課税期間につ いて一般課税により申告する場合で、課税売上割合が 95%未満である事業者にのみ適用されます。

他方、一般向け電子書籍・音楽の配信など、役務の性 質や取引条件等から判断して、当該電気通信利用役務の 受け手が通常事業者に限られるものでない場合には、役 務提供者たる国外事業者に消費税の納税義務が発生しま す。この場合、役務の受け手である国内事業者は、当該 国外事業者が登録国外事業者として登録を受けていない 限り、当該役務にかかる課税仕入れについて仕入税額控 除を受けることができない点に注意が必要です。

今後、国内事業者は、インターネットや電話等を通じ て役務提供を受ける場合、①当該役務提供が電気通信利 用役務の提供に該当するか、②該当する場合、提供事業 者が国外事業者であるか、③国外事業者の場合、当該役 務の受け手が通常事業者に限られるか、④受け手が通常 事業者に限られるとはいえない場合、当該国外事業者が 登録国外事業者であるか等を確認して、適切な消費税の 取扱いを行う必要があります。平成27 年8 月17 日、国 税庁は、登録国外事業者名簿を初めて公表しました。同 名簿は今後も順次更新される予定であり、電気通信利用 役務の提供を受ける国内事業者は注視が必要です。

女性活躍推進法の成立

平成27 年8 月28 日、「女性の職業生活における活躍 の推進に関する法律」が成立しました。同法の成立によ り、301 人以上の労働者を雇用する企業は、平成28 年4 月1 日以降、①自社の女性の活躍状況を把握し、課題を 分析すること、②その結果を勘案して、女性の活躍推進 に向けた行動計画を策定し、これを都道府県労働局に届 け出るとともに、労働者に周知し、外部に公表すること、 さらに、③自社の女性の活躍に関する情報を定期的に公 表することを義務付けられます(雇用する労働者が300 人以下の企業においては努力義務)。但し、本法は10 年間の時限立法となっています。

各企業には、平成28 年4 月1 日までに上記各事項を 実施することが求められます。この点、上記行動計画に は、計画期間、数値目標、取組の内容及びその実施時期 を記載する必要がありますが、その策定に関する指針が 本年10 月頃に公表される予定であり、各企業が行動計 画を策定する際の参考になると考えられます。

さらに、各企業は、行動計画の策定とその実施にあた り、採用、雇用形態、配置、教育訓練、労働時間、育児 支援等に関する様々な社内制度・社内規程を整備し又は 変更することが必要になります。

The content of this article is intended to provide a general guide to the subject matter. Specialist advice should be sought about your specific circumstances.